質量分析
質量分析
:学内共用利用(科学機器リノベーション・工作支援センター登録機器)
:学外共用利用(科学機器リノベーション・工作支援センター登録機器)
質量分析でできること
分子量の決定
MS/MSによる構造解析
高質量精度分析による元素組成解析
LC(もしくはnanoLC)と連動させることにより混合物を分けながらの定性分析
* 化合物の性質(極性・分子量・溶解度など)や目的により、装置ごとに得手・不得手があるため必要に応じて装置を選択する必要がある。
質量分析の原理
質量分析ではサンプルになにがしかのエネルギー(光や高電圧など)を与える事によって気化イオンの状態とし、そのイオンの単同位体質量とイオンの電化数の比率(m/z)によってそれらを分離することでスペクトルの形でデータを取得する。概念図を図1に示す。またその特徴として非常に高感度という事があげられ、サブμM以下の濃度(サンプルのイオン化のしやすさによって異なる)でも分析が可能であり微量サンプルの分析に適した分析装置であると言える。
図1. 質量分析の概念図
一般的に質量分析法は破壊分析であるため、イオン化の際に分子が壊れる(フラグメンテーション)といった現象が生じる事がある。この分解に伴い生じるピークを解析することにより分子の骨格情報を取得することができる。これを積極的に行う事をMS/MSやMSn法と言い、気相中に存在している任意の飛行イオンを選択し、それをガスと衝突させたり(衝突誘起解離:CID)することでフラグメンテーションを促進し、それにより分子構造解析を行うことができる。図2にMS2スペクトルの一例を示す。この例ではペプチドを分解させているため、ペプチド結合の解列に伴うフラグメントピークを検出することができ、それを解析することでペプチドの配列を推定することができる。
図2. MS2スペクトルの例
イオン化の際のエネルギーの種類や分離の仕方により得手・不得手がはっきりする分析手法であるため、サンプルの物性や目的に応じて装置を使い分ける必要がある。分析室で管理している各装置の化合物の極性・分子量に対する一般的なカバー領域を図3に示す。
図3. 各装置の化合物の極性・分子量に対するカバー領域
MALDI-TOF/TOF(AXIMA-PERFORMANCE)では極性・分子量共に幅広いサンプルに対し有用な情報を取得することができる。また装置の汚染も比較的起こりにくいといったメリットがあることから、合成のトレースやファストスクリーニングなど広範な用途で使用できる。
ESI-Orbitrap(LTQ-OrbitrapXLやQ-Exactive)は最大の特徴として高い質量精度と質量分解能(半値幅分解能)があげられ、これらの装置を用いることで精密質量分析を行う事が出来、その結果から得られた飛行イオンの元素組成を決定することができる。
質量分析の原理については以下のURLの動画を参照ください。
質量分析により得られたスペクトルの解釈の仕方については以下のURLの動画を参照ください。
*動画は大学連携研究設備ネットワークのものを使用させて頂いております。
AXIMA-PERFORMANCE (MALDI-TOF/TOF-MS)
- メーカー名:島津クレイトス
- 導入年月日:2019.8.9
- 設置部屋:文理融合型研究棟3F 301 NMR・MS室
- 測定可能 m/z 範囲:1 - 500,000
- 最大分解能:30,000 程度
(リフレクトロンモード時、リニアーモード時は 5,000 程度) - 高エネルギーCID法およびPSD法による分子構造解析。
- 精密質量分析:リフレクトロンモード、内部標準使用時(3ppm @ m/z 3,500)
Q-Exactive (ESI-q-orbitrap)
- メーカー名:Thermo Fisher Scientific
- 導入年月日:2021.1.6
- 設置部屋:文理融合型研究棟3F 301 NMR・MS室
- 測定可能 m/z 範囲:10 - 6,000
- 最大分解能:240,000 程度
(@ m/z 200) - その他アタッチメント:コンベンショナルHPLC
Orbitrap XL (ESI-LIT-orbitrap)
- メーカー名:Thermo Fisher Scientific
- 導入年月日:2011.5.24
- 設置部屋:文理融合型研究棟3F 301 NMR・MS室
- 測定可能 m/z 範囲:10 - 4,000
- 最大分解能:100,000 程度
(@ m/z 400 orbitrap使用時) - その他アタッチメント:DART (Direct Analysis in Real Time) イオン源、ナノUPLC